動物実験の場合は、性・年齢をそろえるだけでなく病気に対する抵抗力や特定の治療法に対する反応のきわめて似通っていると考えられる、つまり遺伝的特性を等しくする動物を必要な数だけ取り揃えることができますし、それらの動物に質的にも量的にもほぼ等しい病変を人工的に作り出すこともできないわけではありません。さらに、そうして作り上げた病気の経過の一定の時期に、いろいろに条件を変えた治療法を自由に試みることができます。つまり、研究目標に見合った思いのままの実験計画を立てることができますから、たいへん歯切れの良い、そして再現性の高い結論を引き出すことを期待できます。その上、人間の患者の場合は患者の安全・利益を第一に考えなくてはなりませんから、隠された真実や法則を探るという研究目的のためにことさらに苛酷な条件を被検者に強いるわけにはいきませんが、動物実験の場合はできるだけ明確な情報を引き出すために、どれほど手荒な思い切った実験条件でも設定することが許されます。必要なら、いつでも頭をコツンと打って殺し、臓器を調べることもできます。診療のわずかな隙間をぬってチラリと研究的な視線を投げかけ、事実の小さい断片を素早く拾い集めて根気よくつなぎ合わせる作業に比べると、動物実験は段違いに能率的な研究法であることはいうまでもないのです。したがって、組織的な動物実験の導入と普及が十九世紀以来の現代医学の飛躍的な発展の最も強力なスプリングボードであったことは否定しようがありません。