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美のミューズ達の競演がもたらした功罪

スーパーモデルという現象に火をつけたのはカールだけではありません。カールと親交が深かったジャンニ・ヴェルサーチもまさしくその張本人です。このスーパーモデル第一世代がこぞってジョージ・マイケルのビデオクリップに出演した頃のヴェルサーチのステージには、『フリーダム』の曲をバックにリング、ナオミ、クラウディア、シンディーの4人が口パクで唄いながらステージを歩くという演出。僕にとってはスーパーモデルという時代を何よりも象徴するワンシーンとして今も記憶に鮮明に残っている場面です。彼女達の一体何か“スーパー”だったのでしょう。まずは、ジャンル分けされたモデルの活動範囲を超越したことが挙げられます。従来、ファッションショーのステージに出演するショー・モデルと、雑誌の広告や編集ページを飾るグラビアモデルとは一線を画した棲み分けがありました。ショー・モデルに必要なのは身長を含むプロポーションバランスと“動”の表現力、グラビアモデルは圧倒的な美貌と“静”の表現力という具合です。ところが彼女達のパーフェクトボディと圧倒的な美しさは、このふたつの垣根を簡単に取っ払ってしまったわけです。加えて天性に備わったスター性はモードの世界のみならず、音楽業界や映画業界からも熱いラブコールを受けることになるんです。たとえばナオ`ミ・キャンベルがマイケル・ジャクソンと競演したり、シンディー・クロフォードがハリウッド映画に主演したりといった具合に。そして毎シーズン、これでもかっていうスピードで新人のスーパーモデルが矢継ぎ早にデビューしていったんです。カレン・マルダー、ヘレナ・クリステンセン、エヴァーハーツィゴバ、ステファニー・セイモア、タチアナ・ハティッツ、カルラ・ブルーニ、エル・マクファーソン、アンバー・バレッタそしてナジャ・アウアマン…。数えあげればきりがないけど、きっとナジャあたりまでが本当の意味でのスーパーモデルの時代だったんだと思います。そして彼女達の出現によって“スーパーモデルでなければモデルにあらず”といった風潮が生まれ、本来プロのステージンクを見せていた80年代のトップモデル達は次第にその影を薄くしていったんです。モデルのギャランティもどんどん高騰するばかり。なにせワンステージ100万円以上のギャラを取る子達がズラリ勢揃いなわけですから。こうした動きに異論を唱えるデザイナーが出てきたのも当然です。当時アルマーニなんかは、絶対にスーパーモデルは起用しませんでした。作品性よりもどのモデルが出演したかというのが話題に上るっていうのは、確かに本末転倒な印象がありました。