最近私は、何故人はそこまで結婚にこだわるか、その理由がもっと簡単で野蛮なことだと考えるようになった。どうして人は結婚したいのか。それは、若くて未熟であらゆる曖昧さがこわいから、という理由も確かにあるだろうし、三十代になって経済的精神的に自立しても心の拠り所はまた別物だから、という理由もあるだろう。でも結局のところ、人が結婚したいと思うのは、「世界中のほとんどの人が結婚してるから」なんじゃないかと今私は思う。そんな乱暴な結論でいいのか、と自分でも呆れるが、でも私にはそうとしか思えない。世界各国に行ったことがあるわけではない、今まで生きてきた三十七年分自分の目で見たり、友人知人の話を聞いたり、本や映画やドキュメンタリーなんかで見てきたことを私なりに統合すると、やはり「世界中のほとんどの人は大人になると結婚する」ものだ。アフリカとかチベットとかの奥地に住んでいる、文化人類学者くらいしか知らない少数民族の村では、もしかしたら結婚制度がなかったりするかもしれないが、少なくとも普通の日本人が知っている国では「ほとんどの人は大人になると結婚する」。それが何故なのかはあとで考えることにして、まずこの巨大で動かしようのない現実を、受け入れることにしようと思う。話が世界じゃピンとこないかもしれないので、それを日本に置き換えてみる。どうして人は結婚したいのか。それは「日本中のほとんどの人が、大人になると結婚するから」だ。私は学者じゃないので、それを統計やら数字で示したりはしないけれど、たとえば小学校の時の同窓会の名簿を見たって、三十代ともなると独身者の割合はものすごく低い。少なく見積もっても同級生の半数以上は結婚をしている。遅い早いの差こそあれ。そんな確固たる現実を、私はここのところ忘れつつあった。というか、そういう現実から目をそらしていたことに気づいていなかった。そのことに気がついたのは、ある大手新聞社の若い女性記者と、今時の結婚について仕事で話をした時だった。まあ、大手新聞社の記者なので、社会的にも十分認められたエリートの部類に入るといえるだろう。その先入観から「今時の女性には昔ほど結婚は必要ないのでは」という話になるだろうと思います。すると彼女は少し考え込み、そのあとこう言った。「それは東京二十三区だけの考え方ではないですか?」絶句している私にその人は淡々と続けた。彼女は大阪の支社で働いていて、地元の若い女性に結婚について取材を多くし、彼女自身も大阪都市部に住んでいる実感として、私の意見は「束京に住み、ごく限られた(恵まれた)職業に就いている人のもの」だと正直に感じたことを言ってくれた。私は東京も大阪も福岡も札幌も、そういう都市部では結婚に対する意識はもう同じだと思っていたが、現実はそうではないようだ。