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忙しく疲れる毎日を選ぶ

就職から敵前逃亡したみたいで恥ずかしいが、まっしぐらにならなければできない結婚もやはりある。こうして敵前逃亡した私とは違い、多くの友人はきちんと登録をすませ、入社試験を勝ちぬいて次々と就職していった。しかし、彼女たちも数年後、結婚か仕事かという選択を迫られるようになった。もちろん、結婚後も仕事を続けている人もいるが、子供が生まれたり、ご主人が転勤したりするたびに、仕事か家庭かの選択に悩むことになってくる今、私の周囲にいる女子大生たちも同じような悩みを抱えている。女の人がどんどん働くようになっているというのに、そうした悩みは私が結婚したときとたいして変わりがないようだ。大変だなあと思う。しかし、考えてみると、二つのものをどちらも得ようとするのだから、大変でもしかたがないのかもしれない。どちらを取るべきかと相談されるたび、私は、「奥さんとなった自分が好きか、仕事をしている自分が好きか、よく考えてみたら」と、言うことにしている。もし、奥さんとなった自分を手に入れる努力をしたいと感じ、仕事をしているほうの自分はどうでもいいと思うなら、仕事をやめて結婚すればいい。反対に、仕事をしている自分が好きで、奥さんとなった自分に愛情を持てないようなら、彼とは恋人でいるほうが無難だろう。しかし、多くの場合、どちらも好きだ、どちらも大切だと思うものだろう。好きな人と一緒に暮らし、その人の子供が欲しいと願いつつも、仕事をしてきた自分もいとおしいし、捨てきれない。こんなケースがほとんどではなかろうか。こんなときは、無理を承知で両方つかんでみるしかない。当然、肉体的にも、精神的にも、忙しく疲れる毎日を選ぶことになるが、それも自分で選んだ道である。大変でもしかたがない。2つのことを1つの体でするのである。どうしてもどちらかに比重がかかってしまい、バランスをとるのがむずかしいだろう。しかし、やってやれないはずはないと信じたい。ところで、就職登録から敵前逃亡した私は、大学を卒業する直前に結婚した。夫はといえば、フィリピンの大学へ留学するのをやめて、結局大学院の博士課程へ進んだ。当然、私は就職しようと思えばできたはずだが、しなかった。夫が私に専業主婦でいてほしいと望んだからだ。私自身も自分にはそういう暮らしが向いているとわかっていたので不満はなかった。けれども、それから数年後、私は、ひょんなことからエッセイを書いて原稿料を受けとるという暮らしをするようになった。書いている枚数はしれているが、それでも一応は「働く奥さん」になったわけである。自分が「働く奥さん」になった日の朝を私はよく覚えている。居間で掃除機をかけているとき、電話が鳴った。ある出版社の編集の方からの電話だった。「エッセイを書いてみませんか。単行本として出版したいんですが」というはきはきとした声が聞こえてくる。

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